NEW EDUCATION EXPO 2022 高専機構セミナーSDGs課題に高専生がチャレンジ!~探究活動から社会実装へ~【後編】座談会 〜高専の魅力と未来〜

NEW EDUCATION EXPO 2022 高専機構セミナー
SDGs課題に高専生がチャレンジ!
~探究活動から社会実装へ~
【後編】座談会 〜高専の魅力と未来〜

セミナー後半は、登壇者全員で高専の魅力や未来について語りました。

【前編】こちら→高専ってどんなところ? 産官の視点と、高専生の探究活動から

登壇した皆様

石川工業高等専門学校電子情報工学科5年 中田 晴規 さん
佐世保工業高等専門学校機械工学科 4年 森田 羽南 さん
石川工業高等専門学校 電子情報工学科 准教授 越野 亮 さん
佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科 准教授 猪原 武士 さん
経済産業省 風力政策室長 石井 孝裕 さん
イオン株式会社 DX推進担当 菓子 豊文 さん
コーディネーター:立教大学 理学部 SCOLA 特任准教授/サイエンスコミュニケーター 古澤 輝由 さん

高専生のつながり
〜インターネットとコンテストで広がるネットワーク

古澤:高専生の生活範囲についてお聞きします。日頃は学校の仲間と一緒にいることが多いのか、意外
と社会とつながりがあるのか、どのような感じですか?

森田:高専の仲間とも面白い発見がありますが、最近は、他の大学生や高校生と交流して互いの活動や面白い取り組みを一緒にしようという活動をしています。ビジネスプランコンテストなどには高専生だけでなく大学生も参加しているので、そういう場で実際に会ってからつながるという感じが多いです。

中田:僕は、どちらかというと高専内のつながりが強いです。高専ではクラス替えがないため、基本的には5年間同じクラスで仲がいい友達ができます。他学科や他の高専の学生とも、同じ高専生というだけで信頼度や話しやすさが三段階くらい上がるので、気軽に話ができるし仲がいいです。

古澤:越野先生は高専出身ですが、高専生の在り方は変わってきていますか?

越野:インターネットの登場後、高専生を取り巻く環境が大きく変わったと思います。TwitterをはじめとしたSNSが普及し、学内外を問わず情報交換を行うなど交流できていますね。

以前は全国の高専生が自分の趣味や技術・経験・夢などを発表する「高専カンファレンス」というイベントを開催していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり最近は開催できていません。オンラインでつながっていている人同士がリアルで会って勉強会を行うこともあって、とても有意義だったと感じています。

猪原:私は非高専卒の身として、高専生同士の横のつながりを強く感じています。ロボコン、ディープラーニングコンテストなど、一つのテーマに多くの学生が集まり、そこで意見交換するという、学び・交流の場が普通高校に比べて多いことも、全国のつながりができるきっかけになるのかなと思います。

古澤:確かにコンテストがこれだけあるのは高専の特徴とも言えます。

猪原:昔はロボコンが有名でしたが、最近はディープラーニングコンテストや総務省とのコンテスト、リケジョのコンテストなど、社会的ニーズと注目から立ち上がったコンテストも増えており、そういった意味で今後も高専生が活躍する場が増えると、つながりもまた広がっていくと思います。

SDGs課題や社会課題と高専教育
〜高専生はどうやって社会課題を見つけるのか?

石井:技術指向ではなく、社会課題を捉えながら研究を進めていくのが高専の大きなテーマだと思います。社会課題の見つけ方を、高専の魅力という観点から教えてほしい。

森田:大きな社会課題というよりは身近なものになりますが、「私は高専生です」というと、「こういうことに困っている」「こういう技術を作ってほしい」という話をよくいただくので新たな発見になります。さらに求められる技術ができるように勉強しようというやる気にもつながります。そういった意味で「高専」というワードは強いのかなと思います。

中田:4年生の時に地元の町役場のインターンシップに参加して、職員が公式のLINEボットをどう作ればいいかと困っているのを見て、「社会で困っている人っていっぱいいるんだな」と実感しました。高専生と困りごとを持つ人たちのマッチングができれば、もっと社会課題を解決できるし、困っている人を助けながらつながっていけたら素晴らしいと感じています。

古澤:「社会の中で困っている人がたくさんいるんですよ」って普通はなかなか言えないセリフです。その意識をベースに持っていることがすごいと思います。では、行政や産業界の視点から見た高専生の魅力とはどのようなものですか。

石井:未来ロボティクスエンジニア育成協議会を立ち上げた際、高専生に社会課題をどう解決していくかという明確な意識があったことに凄さを感じました。行政では社会課題を解決するとともに、新しい価値を創造していきますが、高専生の取り組みの進め方は行政と全く同じです。技術的観点からも高専生、高専教員の知見は非常に役に立ちます。そこで培われた人材基盤は国にとって極めて重要だと思います。

菓子:高専インカレチャレンジを通じて感じたのは、産業界の側があまり高専のポジションについて理解していないということです。これだけの課題解決意識を持った若者たち、最新の技術を習得している人たちを社会が使わない手はないと思います。特に小売業ではデータ分析が重要になっており、ビッグデータやAIをいかに活用するかという知識は一朝一夕では身につかない。高専生はものづくりもすごいが、バックボーンとして持つ高度な技術知識や解決に至るまでの分析、課題発見能力が優れており、さまざまな産業で役立つと感じます。

古澤:技術を作るまでのトライアンドエラーやプロトタイピングが身に染みているのが高専生の強みです。私も大学で高専出身の学生と一緒にプロジェクトを実施することがありますが、実現能力がものすごく高い。考えると同時に手が動いているので、いわゆる仕事ができるというイメージがあります。

2030年の高専の姿は?

古澤:2030年がSDGsの達成目標年として掲げられています。それを踏まえて、2030年を迎える頃には高専という存在が社会の中でどのようにあったらよいか。最後におひとりずつキーワードをお聞かせください。

森田:高専機構の理事長の言葉ですが、「社会のお医者さん」であるべきだと思います。体に不調を感じたらお医者さんを頼りにするように、社会の不具合が起きた時に、まず高専の力を頼ってもらえるような存在でありたい。就活で企業の担当者とお話する機会がありますが、高専はどのような機関で大学とはどう違うのかと尋ねる人もたくさんいます。しかし2030年には、「あなた高専なの? 高専いいよね」と、皆に言ってもらえるくらいの力が培われるといいなと思います。

猪原:私は「もっとつながる高専」。高専生間のつながりだけでなく、産業界や行政との連携が強まっており、新しい技術やイノベーションが生まれやすくなっています。もう少し大きな枠組みで高専生たちがつながれるような仕組みができると、さらに強固な高専全体としての強みが日本だけでなく世界に広がっていくと思っています。

中田:私は「あなたの未来叶えます」。何か困りごとがあれば、とりあえず高専生に相談してみよう、もしかしたら非常に良い提案をしてくれるかもしれないという期待を多くの人が持ってくれればいいなと思います。

越野:私は「SDGs × DX」。高専は間違いなくこの教育を成功していると確信しています。あくまで自分の意見ですが、SDGs教育を含めて高専は一生懸命取り組んでいます。今は表面的に見えてしまうかもしれませんが、8年後にはまさしく教育が成功していて成果が出ていると思います。

菓子:私はつながるという意味の「LINK(リンク)」をキーワードにしました。高専生の能力を十二分に生かすためには、社会とのつながりをしっかりと持っている必要があります。かつ日本だけではなくて世界中の、特に同じ高専生とつながってほしいと思います。そのためには言語はもちろん、外に向けて情報発信を行うことが必要です。つながっていくことで、日本の技術、日本の若者という部分で非常に多くの役割を持つことができると思っていますので、期待しております。

石井:私は2030年の高専のあるべき姿として、「社会実装のキープレイヤー」をキーワードに挙げました。社会実装をしていく上で、技術で解決できるところもあれば、規制、国際標準、規格化など、技術では解決できないところもあります。実はそういったところも含めて、将来高専で扱っていけるようになると行政としてもありがたいですし、社会実装する上での課題でもあります。特に国際標準の場にいきますと、議長国などは技術的なバックグラウンドがあった上で社会実装に向けた提案をしています。そういった人材が日本から数多く出ていく、それは高専だと思っています。

自筆の2030年の高専のキーワードと一緒に!
左側より:石川高専 中田晴規さん、越野亮さん、佐世保高専 森田羽南さん、猪原武士さん

***

座談会のしめくくり、登壇者皆様のコメントを聞いたファシリテーターの古澤さんが、2030年の高専の姿について、「『課題解決力を身につけつつ、つながって、高専自体の価値をさらに広げていくことで社会変革のキープレイヤーになる』という2030年の高専のイメージができました。」とまとめました。

NEW EDUCATION EXPO 2022 高専機構セミナー「SDGs課題に高専生がチャレンジ!~探究活動から社会実装へ~」では、技術を通して、社会課題やニーズに応える人材を育てる高専の魅力や価値についてお届けしました。
これからも、近未来KOSENでは高専の取り組みを紹介していきたいと思います!

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