NEW EDUCATION EXPO 2022 高専機構セミナーSDGs課題に高専生がチャレンジ!~探究活動から社会実装へ~【前編】高専ってどんなところ? 産官の視点と、高専生の探究活動から

NEW EDUCATION EXPO 2022 高専機構セミナー
SDGs課題に高専生がチャレンジ!~探究活動から社会実装へ~
【前編】高専ってどんなところ? 産官の視点と、高専生の探究活動から

数多くの人材を輩出し、行政・産業界で高い評価を受けている高専。実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高専で学ぶ学生が、SDGsの課題に挑みました。感染症予防や買い物体験の向上などの事例や座談会を通じて、テーマの見つけ方や将来の高専の姿などについて議論しました。

国立高専の基本情報

高専は、実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。15歳から5年間⼀貫の技術者教育で実践力を育成、アイデアだけでなく、社会ですぐに使える技術にまで高めていける人材を育てています。さらにイノベーターとして、新しい価値を生み出す教育も含めて実施しており、5年間を有効に使いながら、コンテストやイベントの参加など、さまざまなことにチャレンジできる環境を整えています。

国立高専に通う学生総数は約5万人、教員総数は約3500人、そして、卒業生の総数は約50万人にのぼります。
全国に51ある国立高専は、一つの独立行政法人が運営していて、全高専が一丸となって学生を育成しています。学生同士のつながりも強く、違う高専生であっても「高専」というワードですぐに仲良くなれます。また、教員と学生のコミュニケーションも多く、互いの距離が非常に近いのが特徴です。

第一期校ができたのが1962年で、今年は60周年にあたります。当初は技術者として即戦力、社会に出てすぐ活躍できる人材を輩出していましたが、今は時代も変わり、社会課題を捉えて解決していく「社会のお医者さん:Social Doctor」となる人材育成を目指しています。

司会からの質問に答える国立高等専門学校機構 教育参事 西井 靖博さん

産官が高専に寄せる期待

セミナーでは、経済産業省より資源エネルギー庁 風力政策室長 石井 孝裕さん(前ロボット政策室長)と、イオン株式会社よりDX推進担当 菓子 豊文 さんが、高専と産業界との連携事例について講演されました。

高専と産業界との連携事例~これまでの取組と今後の可能性~
経済産業省 資源エネルギー庁 風力政策室長 石井 孝裕 さん(前ロボット政策室長)

経済産業省では、将来のロボット人材育成に向けた取り組みとして「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI)」を2020年に立ち上げました。日本を代表するロボットメーカーと教育・研究機関とが連携して、インターンシップ・実習の受け入れ、講師派遣、知見を取りまとめた副読本の作成などを行う取り組みです。現在一部の企業では地域ごとに点での受け入れを行ってはいますが、技術の進展やAI・IoTと連携したロボティクスの進展を考えるととても間に合わない。人材育成は業界全体でいうと基盤そのものなので、産業界と教育機関がタッグを組んで、互いが歩み寄りながら育成していくことが必要です。そのことを企業に理解していただき、面的な取り組みを進めています。

日本では人間を支援するサービスロボットの普及は進んでいません。既存の環境にロボットを合わせようとすると開発コストが高くなるためです。環境にロボットを合わせるのではなく、ロボットに環境を合わせるロボットフレンドリーな環境整備を進めています。オフィス内でロボットが移動する際にエレベーターのコントロールパネルを押すアームをロボットにつけるよりも、エレベーター側にロボットと通信可能なインターフェースを用意したほうが効率的に行えます。

私は現在、洋上風力の推進政策に携わり2040年までに30~45 GW(ギガワット)の案件創出を目標に掲げています。洋上風力は欧州が先行しており、日本はまだまだこれからの分野なので人材が不足しています。高専生とも連携しながら日本の洋上風力、それからSDGsを含めて実現に向けて取り組んでいきたいと思っています。

イオンのSDGs 戦略と高専インカレチャレンジ~環境戦略をベースに変革を促し更なる成長へ~
イオン株式会社 DX推進担当 菓子 豊文 さん

企業の課題に高専生が挑戦するイベント「高専インカレチャレンジ」(主催:SMBC日興証券)に、イオンは2021年に参加しました。「異高専連携でイオンを改革せよ!」と銘打ち、全国12高専23名の7チームが2カ月間で解決策を提案してくれました。

買い物中に商品バーコードをスキャンしセルフ決済できるアプリ「レジゴー」で、食事メニューの提案やアレルギー表示ができるサービスは、メニューに必要な食材を個数単位で表示することでムダな買い物をなくしゴミ削減につなげるものです。雪かきスコップにセンサーをつけて宝探しゲームとして雪かきを実施するという、普段事業をしているわれわれには考えつかないようなアイデアもありました。商品バーコードをスキャンすると商品名や情報が多言語表示される外国人労働者・従業員に向けた商品翻訳アプリの提案では、プロトタイプ作成後にアンケートを実施してリアルな声を収集するなど現実的なビジネスプランまで考えてもらいました。

小売業では今後、OMO(Online Merges with Offline)と呼ばれるオンラインとオフラインの融合が重要です。先行する中国やアメリカにいち早く追いつかなくてはいけない。イオンにとってDXは、すべての事業の垣根を越え、地域を越えてお客様満足度を高めていくことです。将来的には顧客IDを元に顧客視点でのビジネスモデル再構築が必要になってきます。さまざまなデータを集めて未来のサービスや商品を開発して提案するためにも、高専生が持つ技術が必要になってくると考えています。

高専生のSDGs課題への挑戦

高専生たちは、どんな課題を、どんな人たちと連携して探究しているのでしょうか?
佐世保高専 機械工学科 森田 羽南さんと、石川高専 電子情報工学科 中田 晴規さんが紹介してくれました。

技術とグローバルな視点でSDGsに挑む~ファインバブルでスナノミ感染症対策~
佐世保工業高等専門学校 機械工学科 森田 羽南 さん

スナノミとは乾燥した地域に生息する小さな虫で、動物や人間の皮膚の中に潜り込んで感染症の原因となります。現在20カ国以上で蔓延、特にケニアでは200万人以上の患者がいると推計されています。靴によってスナノミと皮膚の接触を遮断することが推奨されているものの、流行地域ではもともと靴を履く文化がなく裸足を好む人が多いこと、また靴を買う余裕がないことなどから、靴の普及が進んでいません。

取り組みの背景を説明する佐世保高専 森田 羽南さん

そこで通常よりも少ない水で高い洗浄・除菌効果が得られるファインバブル(0.1mm以下の小さな泡)を用いて足を洗浄する予防策を考えました。ケニアでは水が貴重で安定した電力を用いることが難しいことを考慮し、手動でファインバブルを発生させる装置を開発。ファインバブルは普通の泡よりも水中に残る時間が長いという特性を持ち、また除菌洗浄効果があるため、薬剤や洗剤量の軽減が可能です。水質土壌保全、皮膚感染症予防などにより4つのSDGsに貢献もできます。次のステップとして装置の効果検証を計画していますが、スナノミは日本に生息していないためJICA・長崎大学のプロジェクトチームの協力を得て、スナノミがいる地域での検証を目指しています。

私たちは今回の取り組みを通じて大きな学びを得ました。それは、アイデアからものづくり、そして、そのものの行き場まで、ものづくりに関する一連のストーリーを考え、使用者や社会に寄り添ったものづくりをすることの重要性です。この学びに気がつくきっかけになった人とのつながりに感謝して、今後も社会の役に立てるエンジニアになれるよう活動を続けていきたいと思います。

買い物情報にスマホでコネクト
石川工業高等専門学校 電子情報工学科 中田 晴規 さん

他高専の仲間と共に高専インカレチャレンジに参加し、「買い物情報にスマホで+CONNECT」というサービスを提案しました。買い物中、欲しい商品の消費期限やアレルギー情報などを効率良く把握できたらいいな、という希望から、カートにタブレットを設置してバーコードをスキャンしたら必要な情報が見れる設計を最初に考えました。タブレット付きカートの全店導入や運用コストを考えると根本から見直す必要性を感じることもありましたが、いろいろ調べる中で、イオンで既に専用スマホを用いた自動会計システムの実証実験「レジゴー」があることを知りました。そこで「レジゴー」の追加機能としてバーコードを読み取ったときに自分の欲しい情報を手に入れられるサービスに開発をシフトしました。

アイディアを実現するときに考えたことを話す石川高専 中田 晴規さん

提案した「+CONNECT」は商品のバーコードを読み取ると商品情報が入手できるサービスです。ログインすると商品のクーポン、アレルギー情報など、自分が欲しい情報を抜き出して表示できます。将来的には購入履歴から顧客が好む商品情報を表示する、購入頻度が高い商品のクーポンを提供するなどの施策も考えられます。実際に購入した商品ではなく、購入前にバーコードを読み取った情報が記録されるため、購買履歴だけでは見えてこなかった高度な分析も可能になります。

今回の挑戦を通じて、理論だけを考えるよりも、まず手を動かして作ってみることの重要性を感じました。一度開発することで、完成形がより鮮明になるだけでなく、開発してはじめてわかる課題も数多くあります。今回は試作品を作り問題を洗い出して検証を繰り返すプロトタイピングという手法を取りました。またそれぞれの専門がバラバラで得意分野も違うメンバーでチームとして開発することで、より良い価値を作ることができたと感じています。相手も高専生という信頼感があり、最初から近い距離感で始められたのは大きいと思います。

***

セミナーの前半は、産官と高専の連携事例や高専への期待、そして高専生がどのような課題に取り組み、社会連携しているか、紹介しました。
後半は、登壇者全員で、高専の魅力と未来について語りました。

後編へ続く→こちら

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