イノベーションの未来を拓く徳山高専の教育を考える~徳山高専型STEAM教育とは何か

イノベーションの未来を拓く徳山高専の教育を考える~徳山高専型STEAM教育とは何か

2024年2月29日(木) 13:30~16:30
徳山高専 第1スタジオ型演習室

AIの進展により、未来の社会は急速な変化の中にあります。この変革をリードするには、柔軟性と創造性を備えた人材が必要です。そこで徳山高専では、STEAM教育の重要性に焦点を当て、高専生の育成に必要な要素や教員のスキルについて考えました。
ビジネスの第一線で活躍する専門家を招き、次世代の人材育成に役立つヒントを探ることを目的としました。同時に、教員自身が実践的な方法でSTEAM教育を展開するためのアイディアを共有し、次年度の授業への具体的な導入を検討しました。

「自由に考えるための教育」がSTEAM教育の「A」

東京工業大学の益一哉学長からは映像でメッセージをいただきました。「Artsを芸術とか絵画と考えると難しくなります。古代ギリシャ・ローマの自由民と奴隷は、『自分で考えて行動できるか/できないか』で区別されていました。『自由に発想を持つための教育』がSTEAM教育のAと考えればいい」と提言しました。

一方で、「高度経済成長時代には使い勝手のいい技術者を養成するために決まりきったカリキュラムを教えていけばよかったかもしれません。しかし、日本社会も技術も変わってきて、単に便利なモノを作るのではなく、『何をしたいか』を実現するために産業や技術が存在する時代になりました。時代の変化に応じて教育も変わらなければならないのをわかっていながら、変わろうとしないのであれば、それは罪ですよ」という厳しい言葉があり、参加者の身が引き締まるような雰囲気になりました。

「教員の市場価値の最大化」が徳山高専の独自性につながる

産業能率大学経営学部の加藤肇教授がファシリテーターを務めたトークセッションでは、株式会社キカガク顧問の吉崎亮介氏が登壇しました。自身も舞鶴工業高等専門学校で学び、ビジネスパーソン向け教育プログラムを開発した経験から、「高専教育では特に歴史を学ぶ機会が少なく、例えば資本主義についても、どういった時系列で成立したのかを考える力が足りません。高専生は手を動かして技術を習得することは得意かもしれませんが、その先の抽象論が苦手かもしれません」「通りいっぺんの授業では興味を持って取り組んでくれる学生が少ないのが現実で、むしろ教員が自身の市場価値を最大化することで、徳山高専ならではの独自性が作れるのではないでしょうか。そのためにはまず教員が何をしたいかを考えることが重要だと思います」と話しました。

ワークショップで徳山高専の魅力とSTEAM教育を考える

こうした問題提起を受けて、教員はチームに分かれて「徳山高専の魅力や強みを考える」をテーマにディスカッションし、それぞれ発表しました。「コンパクトな学校で、地元愛がある学生が集い、コンビナートとのインターンシップなどを通じた連携も図れる」「いろいろな分野の教員が集まっていて、教員と学生の距離が近い」「課外活動などを自由にできる環境がある」「いろいろな進路が選択できたり、コンテストに自由に取り組める」などが挙げられました。

次に「徳山高専の特別授業を考える」をテーマとしたディスカッションおよび発表がありました。「量より質で、中学生から見て先輩の高専生が憧れの存在になるようにする」「高専生が中学生を相手に先生になり、いかに少ないレゴブロックで橋を作り、車を走らせるかを競うコンテストを行う」「コンテストを中学校に提案して、中学生とその保護者もプレイヤーになってもらうことで、高専の良さを知ってもらう」などの案が出されました。徳山高専のホームページでテクノロジーをショート動画で発信する「テックトックでバズろう」や宇宙を視野に入れた「月に基地を作るビジネスを考える」といったユニークなアイデアも飛び出しました。

ファシリテーターの加藤氏は「中学生の入学促進と学生の成長という『一石二鳥』のアイデアが多く、これがSTEAM教育のフレームになるかもしれない」と総括、吉崎氏は「民間の視点としては、What(何を)、How(どのように)だけでなくWhy(なぜ)の掘り下げがもう少しあったほうがよいと思います。チームで合意形成するには、課題解決のためのボトルネックを定量的に見つけることが必要です」と課題も述べました。

張間貴史次年度教務主事は「方向性は共有できたかなと思います。おそらく『これをやればSTEAM教育だ』という形に落とし込んでしまうと、STEAM教育ではなくなると思います。学生たちがSTEAM教育について考えられるように教員自身も成長できればいいなと感じました」とあいさつして、プログラムは終了しました。

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