「NEW EDUCATION EXPO 2023」高専機構セミナー 小・中・高で理系好きを増やす高専のカガク~地域とのコラボでワクワクを広げる~【後編】高専と他の学校のコネクションの作り方のヒントを探る

「NEW EDUCATION EXPO 2023」高専機構セミナー 小・中・高で理系好きを増やす高専のカガク~地域とのコラボでワクワクを広げる~【後編】高専と他の学校のコネクションの作り方のヒントを探る

セミナーの後半では、高専と中学校の連携の実例を担当者が話してくれました。会場では、全国の高専が2022年度に開催した「出前授業・公開講座一覧」の冊子が配られました。

【前編】はこちら→実験的な出前授業でカガク好きを増やす

中学校の先生と高専の先生によるトーク 
「高専と他の学校のコネクションの作り方」

中学校を訪問して理工系の学びと職業の魅力を伝える「サイエンスキャラバン」を成功に導いた、中学校の先生と高専の先生による見事なコラボレーションをご本人が語ります。

小山市立小山第三中学校 教諭 江田史江 先生
 小山工業高等専門学校 教授 柴田美由紀 先生

小山高専では、中学校を訪問して理工系の学びと職業の魅力を伝える「サイエンスキャラバン@スクール」を令和元年度から実施しています。担当の柴田先生が受け入れ校を探していたとき、ママ友の一人が「それならうちの中学校へどうぞ」と手を挙げてくれました。それが、小山第三中の江田先生で、何と理科の先生でした。オーダーメイドのプログラムで伺おうと、一緒にプログラム構成と内容を検討することになりました。

小山第三中ではキャリア教育を年間計画で実施し、1年生では進路の意識化を指導目標としています。外部の方から話を聞くことで、普段担任の先生から聞く話とは異なる視点でいろいろなことを感じることができるので、ぜひ進路について話してほしい。また、小山高専のさまざまなイベントに積極的に参加している生徒が多いので、小山高専の先生が来てくれることに興味を持っています。そこで、キャリアレクチャーと演示実験をコラボレーションしてほしいという要望がありました。

小山高専は中学校を卒業して5年間学び、半数は就職するので、卒業すると社会に出るというイメージをしっかり伝えられます。そこで、キャリアレクチャーと演示実験を組み合わせた柔軟なプログラムを作りました。

演示実験「色の化学−魔法の水?!−」は、中学校理科と接続しつつ、生徒の科学への興味をかき立て、そのワクワク感が自分の将来にどうつながるのか、社会的文脈と自分の好奇心がつながっていくという効果もあります。令和元年度から4年連続で小山第三中で実施し、ほかの中学校にも同じプログラムで展開しています。キャリアレクチャーも同時に行っていますが、実験の後にレクチャーを実施したほうが満足度が高いこともわかってきました。

1年生の「入門編」に続いて、2年生には「発展編」を展開することになり、建築学科の先生が数学・技術と接続する「空間把握能力ワーク」を実施しました。また、小山第三中には情報技術部という部活動があって、立体図形問題に興味を持った生徒が、3Dプリンターで立体模型を自作するなどの広がりもありました。令和2年度からは「入門編」と「発展編」を実施していて、毎年10人ほどが小山高専に進学しています。さらに情報技術部の協力のもと、「サイエンスキャラバン@Web」をトライアル実施し、高専に来ないと体験できない実験環境や、研究室での実験を配信しました。

全国各地に高専があり、各高専には、それぞれの分野に専門性を持った教員がいるので、まずは最寄りの高専に、理科教育での困りごとなどあれば、相談してもらえたらよいと思います。きっかけは何であれ、小中学校の先生に高専を知ってもらうことが、子どもたちの進路選択の幅を広げることにもつながります。

ファシリテーターによる総評・質疑

高専は「ものづくり」を軸に、アイデアで終わらず、具体的なトライアル&エラーを繰り返しながら実践教育として地域課題を前進させることができることが最大の特色です。

科学コミュニケーター 本田 隆行 さん
科学コミュニケーター、サイエンスライター 堀川 晃菜 さん

日本科学未来館で科学コミュニケーターとして活動した経験のある二人は、「地域や小中学校との連携を加速する上で、科学館との連携がカギになる。科学館は小中学生の遠足でも行く近い存在」と語ります。

また、地域課題や地域産業を盛り上げる手伝いをしてほしいという要望に対して、「どこもマンパワー不足なので、高専生の力を借りられないか。高専生にとっては社会を知る機会になり、現実の壁を知りながら、自分たちの得意なことを生かす喜びも感じられるだろう。また、大人の目線で伝えるよりも、高専生が伝えたほうが小中学生に届きやすい」と提案しました。

参加者には、全国の高専が2022年度に開催したSTEAM教育支援がまとめられた「出前授業・公開講座一覧」の冊子が配られました。今回の出前授業だけでなく、さまざまなテーマの取り組みが6分野のカテゴリー(理科実験教室、ものづくり講座等、プログラミング教育等・情報セキュリティ教育等、リベラルアーツと理系分野を分野横断的に学ぶ講座等、理数、ジュニアドクターの講座・JST女子中高生の理系進路選択支援プログラム等)に分けて掲載された盛りだくさんな内容です。

質疑応答では、「高専を応援しているので、STEAM教育の普及で企業やマスコミが役に立てること、あるいは現状の課題を教えてください」という質問に対して、津山高専の廣木先生は「こういう活動は楽しいし、私たちも好きでやっている面がありますが、これが本業ではないので、余剰で対応しています。リソースがあればアイデアはあるので、そこが課題かなと思っています」と答えます。小山高専の柴田先生も「理工系キャリアプロジェクトはあるが、もともとはやりたい人が集まってという感じで、専任で動いてる方はいない」と言います。このような現状を打破するためにも、外部との連携が求められています。

まとめ・閉会のご挨拶

全国各地に高専があるので、理科教育での困りごとなどあれば、まずは最寄りの高専に相談してほしい。中学校の先生に高専を知ってもらうことが、子どもたちの進路選択の幅を広げることにもつながります。

独立行政法人国立高等専門学校機構  理事長 特別補佐 本江 哲行

高専機構では、理数・情報分野の学習等を通じて、高い意欲や突出した能力を有する小中学生を発掘し、さらに能力を伸長する体系的育成プランの開発・実施を行う、ジュニアドクター育成に力を入れています。

STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念です。高専教育では特にArtsに力を入れています。

カガクに興味を持つだけじゃなくて、いかに使うか、あるいは自分が夢見たことをどう実現するか。例えば、苦いお茶を飲んだ後は甘みを感じないという実験から、味覚をうまくコントロールすることで健康維持につながるのではないか。

技術者というよりも、社会の課題を解決する「ソーシャルドクター」を育てるのが高専です。学校名に「工業」が入らない高専もあって、ビジネス系や数理分野に注力するなど、高専は時代に合わせて変わっています。小中学校と企業をつなげる役割もあって、PBL(Project Based Learning、課題解決型学習)に取り組んでいます。

国立高専は全国に51校、国公私立合わせて57校あります。高専は地域がベースになっているので、どこの高専にでも声をかけていただければと思います。高専生は15歳から20歳という、心と体が一番育つときに一番刺激を与えられています。地域とのつながりが強く、例えば沖縄高専には観光・地域共生デザインコースを設けています。

高専では15歳から工学系に絞られてしまうと思われますが、普通高校も文系・理系に分かれるので、そういう意味では高専のほうが守備範囲は広くなりますので、いつでも高専に声をかけていただければと思います。

***

「NEW EDUCATION EXPO 2023」高専機構セミナー「小・中・高で理系好きを増やす高専のカガク〜地域とのコラボでワクワクを広げる〜」では、「高専のカガク」の意味と、カガク好きを増やすために実施している出前授業のデモ、高専と中学校の連携の実例についてお届けしました。

これからも、近未来KOSENでは高専の取り組みを紹介していきたいと思います!

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