高専生がバックキャスティングで考える2050年の世界と、それを支える技術

高専生がバックキャスティングで考える2050年の世界と、それを支える技術

2020年12月19日(土)徳山高専主催・オプンラボ企画で、全国の高専生を対象とした近未来KOSEN「科学技術で2050年の世界を変える!」をオンライン開催しました。

現在の高専生たちが社会の中心となっている「2050年」には、デジタルトランスフォーメーションはさらに進み、学校で学んだ知識だけでは変化に対応できない時代が来ます。「2050年」を考えることで、高専生が今、何を身につけるべきかを考え、行動変容のきっかけをつくりたい。グローバル社会を見据えて視野が広く、視座が高く、高いコンピテンシーを持った技術者を育むための機会を提供したいと考えました。

近未来KOSENとしては、初のオンライン開催となりました。全国から応募があり、北海道から沖縄まで16高専44名の学生が参加しました。

具体的には以下のプログラムで開催しました。
・第1部パネルディスカッション
・第2部ワークショップ
・第3部プレゼンテーション・フィードバック

「2050年の未来を考える」ための最近の科学技術

第1部のパネルディスカッションでは、サイエンスコミュニケーターの古澤輝由さんがメインファシリテーターをつとめました。3人のパネリストが、それぞれの専門分野に関する「研究テーマ」について講演を行いました。「科学と社会」「宇宙工学」「環境とライフスタイルのナッジ」について、研究者ならではの熱い思いを語り、高専生の知的好奇心を刺激しました。

科学技術振興機構の日下葵さんは2050年を考えるヒントとして、人口減少を切り口に話をしました。望ましい未来の姿から逆算し、どんな技術が必要かを考える「バックキャスティング」の考え方について解説し、100億人100歳時代にどんな科学技術があればハッピーになるかと問いかけました。

明石高専出身でJAXA宇宙科学研究所の尾崎直哉さんは、宇宙開発の現状と日本の課題から、未来は簡単に予測できないからこそ、常に未来技術にアンテナを張っておくことの大切さを語りました。「いまの技術が陳腐化しそうであれば、すぐに軌道修正していかなければいけない」という言葉が印象的でした。

環境省の池本忠弘さんは、行動科学の知見の活用により、選択の自由を残しながら、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする「ナッジ」の手法を多くの具体例で紹介しました。未来を予測する最良の方法は「自分で創ること」であるとし、「ぜひ、未来を想い描いてください」と高専生にメッセージを送りました。

パネルディスカッションが始まると、チャット上へ次々に質問が寄せられ、高専生らしい技術視点、切り口の鋭さが目立ちました。最新の技術やその技術を生かすための日本の文化的な背景について、高専生たちが、日々アンテナを張っている様子がうかがえました。

「2050年の未来を創造する」アイデアがあふれ出す

第2部のワークショップ「MIRAI NEWSをつくろう」では、第1部の最近注目の科学技術を参考にして、「健康・医療」「1次産業」「エネルギー」「輸送・移動」「ライフ&ワーク」をテーマに2050年の未来を創造し、それを実現可能にする技術についてワークショップを行いました。

2050年に実現したい技術をチームで議論した後、未来のある日にニュースとして報道することをアウトプットとしました。

はじめに元NHKアナウンサーで伝え方・見せ方のプロである石垣真帆さんに「MIRAI NEWS」のためのポイントを解説していただきました。

各グループに「変人」(エッジの立った職業人、変化を起こす人)がファシリテーターとして参加して議論をサポート。学生は各自の意見をデジタル付箋に入力していくことで、意見を共有し、ブラッシュアップしていきました。

報道番組形式で「MIRAI NEWS」を発表

第3部では報道番組形式で10チームが発表を行いました。すべてのプレゼンテーションがユニークで興味深く、チャットでは他のグループやファシリテーターからの感嘆の声で大いに盛り上がりました。最後に「未来賞」「テクノロジー賞」「プレゼン賞」の三賞を全員の投票によって選出しました。

ワクワクする未来を想定し、その未来を実現する技術に名前をつけ、さらにその技術についてニュース形式で発表しました。各グループ考案の技術名は「脳エモン」「銀河発電」「Shun-scene」など、いずれもユニークなもので、限られた時間の中、どのチームも未来志向型で聴きごたえのある内容を発表しました。

発表内容と技術名

技術名内容
A脳エモン脳のデータを数値化することで病気にかからない体に
BCell#50血液中で病気を発見するロボット
C時短レンジ
※テクノロジー賞
食材が一瞬で食べられる状態に成長する
DBe Alive to survive人類の栄養摂取の方法が変わる?大規模細胞培養技術
E銀河発電太陽のエネルギーで環境問題を解決
FSpot Ene- Charger新世代エネルギー装置 感情をエネルギーに
Gレールクン超高速新幹線 東京大阪間を10分で移動
Hノンストレスモビリティ布団を出ずに移動 事故、渋滞、ストレスゼロ
IShun-scene
※未来賞
越後製菓が瞬間移動装置を開発 生命体を分解して瞬間移動
JBR:バカげているほどリアル
※プレゼン賞
世界各地から東京ドームで演奏できる

終了後は、高専生からの要望で、オンライン懇親会が急遽開催されました。普段はあまり接する機会のないビジネスの最前線で活躍する「変人」と語り合い、全国の高専生同士の交流の場ともなりました。

ワークショップ後のアンケートには、「今回のような全国の高専生同士が交流する機会をもっと作ってほしい」「次も絶対参加したいです」「興味を広げるには色んな人と話すことが大事だと実感できる時間でした」という声が寄せられました。

また、「世界中から飢餓をなくします」「起業したい、ビジネスをスケールする手伝いをしたい」「SDGsに向けて新しいエネルギーとなるものを作りたい」など、高専生の未来創造への挑戦に意気込みを感じられました。

近未来KOSENでは今後も対話型のセッションや課題解決のワークショップなどを通じて、高専生が今、何を身につけるべきかを考え、行動変容のきっかけをつくっていきます。

ファシリテーターとして協力いただいた変人のみなさま
Moonshot Inc. 代表取締役CEO 菅原健一 さん
高校教員(生物)大野智久 さん
Bloom&Co CTO 増井雄一郎さん
コムニコ SNSマーケティングラボ ビジネスプロデューサー 神部公佑さん
アビームコンサルティング 顧問 本間充さん
イージフ 副社長 CTO 石井昭紀さん
JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系特任助教 尾崎直哉 さん
ニコラデザイン・アンド・テクノロジー 代表取締役社長 水野操さん
大日本印刷 イメージング事業部 林典彦 さん
人事の複業家&マイクロ人事部長 高橋実 さん

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